おわりに
本論における機能ブランドとはいわばお墨付きであり、官能ブランドとは商品に描かれた絵柄のような存在である。絵画に対して超過価値や愛着という表現は違和感がないものの、お墨付きに対し超過価値や愛着という表現には違和感があるといえる。また、品質が明らかな場合は、お墨付きは意味をなさないが商品に描かれた絵画はその価値を失わない。機能ブランドと官能ブランドは、ブランドとして同じく商品の購入を促進するものであるが、その特性は異なる。
本論は、ブランドにかかる議論に、存在基盤の考察という視点を提供することによって、ブランドの論理的な理解を可能とした点に意義が認められるものと考える。ブランドの理論化を妨げる要因の一つが、ブランドを一義に捉えることによる、ブランド概念が含む内容の多様性である。この解決策の一つが、ブランドをその存在基盤の視点から捉える本論の考え方である。
本論によると、ブランドの拡張は、機能ブランドについては商品分野によって作用が限定されることからその拡張も商品分野によって限定される一方、官能ブランドについては商品の分野によって限定されることはないものの品質不安によって限定される、というようになる。ただし、実際に、あるブランド拡張に成功するか否かについては、対象となるブランドの機能ブランドと官能ブランドの構成割合や、拡張先となる商品の分野がそれぞれのブランドに対してどのような反応を示すかといった分析が必要となる。
本論をより実践的に用いるためには、商品がブランドに対してどのような反応を示すのかを、その商品が市場に投入されてからの経過年数や商品の基本特性などの関係で把握する必要があるとともに、消費者の心情を正確に測定する手法の確立、ならびに、ブランド力と販売実績の適合度合を示す数学的な基準が求められる。